節税の大きな味方!? 倒産防止共済(経営セーフティ共済)に入るときはここに気を付けよう

皆さんこんにちは。
新座市・志木市・朝霞市を中心に会計事務所を運営しています
税理士の吉原です。
皆さん、節税してますか?(セコム風に)
今日は倒産防止共済(経営セーフティ共済)制度について説明していきたいと思います。
この制度、ずいぶん人口に膾炙したといいますか、
こちらから案内しなくてもすでに「知ってるよ!」という方が増えてきている印象ですね。

↑ こういうパターンもある。
節税本やYoutubeの税理士系のチャンネルでもよく取り上げられているので、
最近では、法人税の節税手段における”一手目”として認知されてきています。
今回は、この経営セーフティ共済に焦点を当て、
加入を検討している方へ向けて、
そもそもどういった制度で、掛け金や払戻金にはどのような効果があり、
事前にどのような注意点について知っておくべきか、というところを説明していきます。
そもそもどういう制度なの?
経営セーフティ共済は、中小企業倒産防止共済法に基づいて昭和53年に開始されました。
中小企業は、経営を行っていくうえで人や資金面で制約がありますが、
その中で取引先が倒産してしまうと甚大なダメージを受けます。
特に取引先が大口であり、売り上げの依存度が高ければ連鎖倒産発生の危険も高まります。
そこで!
中小企業がお金を出しあい、何かあった時にそこから資金の貸し付けを受けることで、
連鎖倒産を防ぎ、再び安定した経営を行うことができるようにこの制度が作られたのです。
厳密には異なりますが、
中小企業にとっては万が一に備える、一種の保険であると言ってよいでしょう。
そういうわけで、元々は中小企業の連鎖倒産を防ぐという目的で作られた相互扶助のシステムなのですね。
名前も共済ですし、それが主目的だということです。
加入できるのは
経営セーフティ共済に加入することができるのは、
①個人事業主(事業所得、不動産所得) ②法人 です。
①個人事業主の場合
まず1年以上事業を継続していることが必要です。
この事業継続の判定は開業日を起点とするので、
通常、開業して1年目は加入ができないことになりますね。
それから、常時使用する従業員数についても要件がありますが、
ここは最低でも従業員が50人を超えてこなければ抵触しませんので、
通常ここで引っかかることはないと思います。
②法人の場合
1年以上事業を継続している中小企業者であることが条件です。
ただし、個人事業主が法人成りをして、
元々行っていた事業を法人に譲渡した場合は、
個人事業主時代と通算することができますので、
個人と法人の期間を合わせて1年以上あればOKです。
また、①個人事業主と同様、
従業員をたくさん雇っている場合 や
資本金が高すぎる場合(最低5000万円超) では、
もはや中小企業ではありませんので、この制度へ加入できません。
あとは、法人の種類によっても加入ができないものがあります。
よくあるのは医療法人ですね。
お医者さんが事業を法人化して医療法人とする場合、
個人で掛けていた経営セーフティ共済は医療法人へ引き継ぐことができません。
加入方法
加入にあたっては、
制度を運営している中小企業基盤整備機構に直接申し込むのではありません。
ワンクッションおいて、別の窓口から手続きをする必要があります。
主には2つのルートがあります。
①銀行ルート
口座開設から1年以上経過している銀行か、
1年が過ぎていなくても当座預金がある銀行
又は
融資取引している銀行
が受け付けてくれます。
こちらのルートが一番多いですかね。
融資を受けていると担当者が付きますし、その方に案内してもらうとか。
法人は窓口に行って手続きすることが基本的に必須ですが、
個人だとオンラインで申し込みできるんですよね、今は。
ネット銀行は受け付けていないのが通常なので、ご注意ください。
②金融機関以外の団体ルート
これは色んな団体がありますが、主には商工会です。
あとは各地の中小企業の組合とか。
これ、税理士の協同組合も窓口になれまして、
税理士は、税理士内の互助組織である協同組合に大抵入っているのですが、
そこを経由して申し込みをすることができます。
つまりは、困ったら税理士に経営セーフティ共済加入の仲立ちをお願いすれば、税理士経由で申し込めるということです。
掛金の取り扱い
経営セーフティ共済に加入して、掛金を支払いました。
そうするとその掛金は法人・個人ともに経費にすることができます。
掛金は月額5,000円~最高20万円まで5,000円刻みで設定可能。
したがって年間240万円まで経費算入が可能です。
一応規定も見ておきます。法人だけ。
租税特別措置法 第66条の11 特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例
法人が、各事業年度において、長期間にわたつて使用され、又は運用される基金又は信託財産に係る負担金又は掛金で次に掲げるものを支出した場合には、その支出した金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
二 独立行政法人中小企業基盤整備機構が行う中小企業倒産防止共済法の規定による中小企業倒産防止共済事業に係る基金に充てるための同法第2条第2項に規定する共済契約に係る掛金
あ、前納がありますね。
前納は文字通り、本来は先の分の掛金を前もって支払うことですが、
その前納についても支払った事業年度において経費になります。
前納なんですが、
経営セーフティ共済側としては、
800万円までであればいくらでも先に払ってくれていいということです。
ただ、税金計算上経費にできるのは、支払から1年以内に到来する月分、
つまり12か月分だけになりますので、残りの分が経費になるのはずっと先のことになります。
この取り扱いは租税特別措置法の通達に規定がありますので、
読んでみましょう。
(中小企業倒産防止共済事業の前払掛金)
66の11-3
中小企業倒産防止共済法の規定による共済契約を締結した法人が独立行政法人中小企業基盤整備機構に前納した共済契約に係る掛金は、前納の期間が1年以内であるものを除き、措置法第66条の11第1項第2号に掲げる掛金に該当しない。(昭53年直法2-24「46」により追加、平3年課法2-4「三十一」、平5年課法2-1「三十二」、平9年課法2-14「二十一」、平11年課法2-9「五十四」、平16年課法2-14「二十九」により改正)
したがって、前納によって経費にできるのは20万円×12か月の240万円です。
初年度の毎月払い分と合わせると、800万円のうち大部分を1年で支払うことができるんですね。
ただ、これができるのは1年目(月払いから前納へ切り替える年)だけで、次年度以降は240万円が上限となります。
なお、この経営セーフティ共済の前納は、
法人税基本通達 2-2-14 でいうところの「短期の前払費用」ー家賃の前払いとかー
とは建付けが異なりますので、毎期継続する必要もないです。
経営セーフティ共済の注意点
経営セーフティ共済は、預金口座にあったお金の置き場を共済に変えるだけで、
目先の税金を減らす効果があるので、比較的カジュアルに加入しがちなのですが、
注意点がけっこうあります。
これを見ていきましょう。
①解約したときに掛金が100%返ってこない場合がある
はい、これです。
基本的には掛金の納付を40か月継続しないと解約手当金が減額されます。
以下は、中小企業基盤整備機構のHPから引用したものですが、
解約した場合、期間の経過に応じて何パーセントが返ってくるかの表です。

↑ 1年経たないと0%て・・。
あ、こちらは基本的には左の「任意解約」だけ見ておけば十分です。
「みなし解約」は死亡や解散などの仕方なし解約、
「機構解約」は掛金の12か月以上の滞納で行われる強制解約のイメージで。
しかし3年4か月経たなければ100%返ってこないとは、少し長いですよ。
②解約手当金を受け取った場合はその全額が一度に収益になる
何年も積み立てた掛金。
掛金は、今まで積み立ててきた年数で分散して経費になっています。
しかし解約した場合、解約年に積立金額がまとめて収益になってしまいます。
部分解約はできないですからね。
法人であれば益金として利益にプラスしますし、個人事業主であれば事業所得の収入として計上されることになります。
・・・
払ったときに経費(マイナス)だったのであれば、
それが返ってくるときに収益(プラス)となるのは、
税金計算では当然ではあります。
単に課税が将来に繰り延べられたに過ぎない。
問題は一度に返ってくるその時期をいつにするか、
解約のタイミングをはかる必要が出てくることです。
掛金だけでみれば結局、”行ってこい”なのですが、
一度に収益計上がなされると所得が大きくなり、
経費としていたときより税率が高くなって、
結果として経費による減税額よりも課税額の方が大きくなる可能性があります。
③解約後すぐの再加入の場合、2年以内に支払った掛金が経費にならない
以前はなかったこのルール、令和6年度の税制改正で追加されたものです。
令和6年10月1日以降に経営セーフティ共済を解約した場合、
解約日から2年以内に支払った掛金は経費にならなくなります。
定期預金と同じになるイメージで、
経費が関係しないお金の移動があるだけになります。
この改正は、こちらの資料で中小企業庁がプンプンしていますとおり、
加入しては解約し、また再加入を繰り返す「不適切な利用」・・
これが多くあった状況を是正するためのものであったということです。
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/shingikai/kyousai/022/002.pdf
しかし当時も思ったけど、やはりこの資料面白いな。
●本来の目的である貸付の発生が減少しているのに、加入は急増

●解約件数は突出して3,4年目が多い。

●加入者アンケートでの加入動機は節税目的が最も多い。
金融機関に勧められて、とか税理士に勧められて、という回答も根っこは同じでしょうね。
とすると大体は節税目的での加入ということになりますが、これは体感通りです。

うーむ、資料越しに怒りが伝わってくる。
④積み立てる掛金には利息や配当が付くわけではない
これは経営セーフティ共済の制度趣旨によるものです。
あくまで取引先が倒産して困った中小企業者へ資金を貸し付けるのが目的で、
積極的な資産運用は求められてないのです。
ブラザーである小規模企業共済はちょっとずつ増やしてくれるんですけどね。
ま、あちらは退職金としての積立が目的であることに加えて、
長期的なスパンでの運用もできるのでしょう。
こちらは短期解約者もあれば、貸付用の資金融通もしなくてはいけない事情もありますから。
⑤前納には特に注意しよう
前納をするときは用心してください。
なにに?と言えば手続きの期限です。
経営セーフティ共済に既に入っていて、今期の最終月に前納したいという場合、
その月の5日までに手続書類が中小企業基盤整備機構に届いている必要がある。
しかも、その手前で加入の時と同じ窓口を経由する必要があるので、
実際の期限はもっと前にきます。
期限に遅れるとどうなるのか。これは月額払いに戻ります。
したがって、最大である240万円の前納を行いたかったが間に合わなかった場合は、
20万円の引き落としがかかるだけになります。
前納した分の充当が終わる前に機構からは案内が来るのですが、
手続き忘れが意外とある印象です。
ちなみに、新規加入と同時に前納をしたい場合、
つまり決算ギリギリになって税金を減らしたいとして前納をする場合は、
申し込みと同時に銀行振込をするダイレクトアタックが使えるので、
意外と当月でもなんとかなります。
メリットはどこにあるのか
さっここまで見てきました経営セーフティ共済ですけども、
結局どんなメリットがあるのでしょうか?
私は、制度の趣旨に立ち返って、
取引先倒産時の貸付制度が一番のメリットだと考えています。節税でなくて。
・無担保・無保証で掛金の最高10倍(上限8,000万円)
・無利子。(ただし、借入金額の10分の1に相当する掛金が消滅)
大口の取引先の信用状態が悪化していたり、売掛債権の回収に不安が生じる状況を見越して、
いざというときのために守りの資金を置いておきたい。
資金拘束による運用機会の損失などは厭わない。
万が一に備えた堅実なお金の置き所を検討している方には、魅力があるのではないでしょうか。
いや元々そういう制度なので、そこが一番のメリットのはずです。
節税目的の場合、目先の税金は確かに減りますが、
本来払う税金以上の金額が、いったん事業の運営資金から出ていくわけですよね。
しかもそれを全額手元に戻そうとするには3年4か月待つ必要があり、
取り戻した場合の課税の上乗せについても検討する必要があるので、
心理的に引き出しにくい状況が継続する。利息や配当もつかない。
節税目的であれば、お金のトータルのリターンを増やそうとしてやっているはずなので、
端的に、そこまでおいしいお金の預け先ではないんじゃないかなあと思うわけです。
しかしいずれにしても、
会社の損益の見込みと納税予測の打ち合わせの中で、
一応の方策になる経営セーフティ共済の話題を出さないことはありません。
これだけ有名になっている制度で、
言及がないのもそれはそれでよろしくないですし。
私はメリットもデメリットも全部お伝えするようにして、
加入判断の材料にしてもらっています。
そういうわけで
疑問があれば聞いてみるといいですよ!税理士か社労士さんにね!
あるいは機構のコールセンターさん!
ここのコールセンターの方はかなり優秀で素晴らしいので。
それではまた。
