配当落調整金と所得税の取り扱い

皆さんこんにちは。
新座市・志木市・朝霞市を中心に会計事務所を運営しています
税理士の吉原です。
最近のキオクシアの暴落、恐ろしいですね。
高値から実に6割以上の減少。
下落局面では、マイナスの増幅装置として機能する信用取引、
ホットでアツアツ、皆が大注目している銘柄に触るときは
常に損切の用意が必須ということになるのでしょう。
さて今回は、信用取引を行っていると発生する配当落調整金の取り扱いについてみていくことにします。
その中でも買建の方、ですね。
配当落調整金とは
配当落調整金は、配当落ちに伴う価格の調整を目的として、
投資家と証券会社の間でやり取りをする金銭をいいます。
信用買いを行っている場合、
建前としては証券会社から金銭を借りて株を買うわけですが、
その株の名義は証券会社となっているため、
信用買いを行っている投資家が配当の権利日を跨いだとしても、
配当金が入金されるのは証券会社となります。
また、配当金の権利落ちが発生すると、通常株価は配当相当額分下落するため、
その配当の価格調整を配当落調整金というかたちで
証券会社を介して投資家間で行うのです。
具体的には、売り方の投資家から証券会社が配当相当額を受け取り、
買い方の投資家へその相当額を送金する形式となります。

所得税法基本通達の規定
配当落調整金の税務上の取り扱いについての規定は、国税庁が定める所得税法基本通達にあります。
まず、ここを見てみます。
37の10-5
株式等に係る譲渡所得等の金額の計算に当たり、信用取引等の方法により上場株式等の買付け又は売付けを行った者が、当該信用取引等に関し、証券業者に支払う又は証券業者から支払を受ける次のものについては、それぞれ次に掲げるところによることに留意する。
(5) 買付けを行った者が証券業者から支払を受ける配当落調整額及び引受権価額に相当する額は、買付けに係る上場株式等の取得価額から控除し、売付けを行った者が証券業者に支払う配当落調整額及び引受権価額に相当する額は、上場株式等の譲渡に係る収入金額から控除する。
(注) 配当落調整額とは、信用取引等に係る株式につき配当が付与された場合において、証券業者が売付けを行った者から徴収し又は買付けを行った者に支払う当該配当に相当する金銭の額をいい、引受権価額とは、信用取引等に係る株式につき新株の引受権が付与された場合において、証券業者が売付けを行った者から徴収し又は買付けを行った者に支払う当該引受権に相当する金銭の額をいう。
(注)のところは、配当落調整金についての説明ですね。
取り扱いの肝は(5)です。
わかりづらく書いていますが要はですね、
「信用買いを行ったときに証券会社から受け取る配当落調整金は、
あくまでも配当そのものではなく、配当の相当額に過ぎないので、
もらった金額分だけ株式の購入金額から除く取り扱いにする」
ということです。
購入金額から除く、ということはその分だけ譲渡の利益が増えるということですから、
最終的には売り買いしたときと同じ「譲渡所得」として課税がされるということになります。
配当の金額分だけ売買利益を得た、という風に考えてください。
したがって、雑所得でもないし、配当所得にもならず、
給与所得などの他の所得と合算されることはありません。
配当所得ではないので、配当控除も使えません。
個人投資家はどうすればいいのか?
譲渡所得として取扱われる、ということは、
普通に売買をしたときと同じ取り扱いになるということ。
したがって、
①特定口座(源泉徴収あり)の場合と
②特定口座(源泉徴収なし)又は 一般口座 の場合とで対応が分かれます。
①の方の場合は、
証券会社が配当落調整金の支払い時に源泉徴収をかけ、
年初に交付する「特定口座年間取引報告書」にも反映してくれます。
したがって、特段することはありませんね。
しかし、あえて申告を選択するケースがあるのも、通常の取引と同じ。
例えば、
・過年度の繰越損失を使用してあえて申告する
・ふるさと納税の限度額を引き上げたいのであえて申告する
・所得控除(基礎控除など)を株式の売買益にも当てたいのであえて(略)
などです。
②の方の場合は、
配当落調整金についても計算したうえで、通常の売買益に加算して申告することになります。
こちらは源泉徴収はされませんので、申告漏れに注意してください。
二重課税になっている?
ところで、配当落調整金は「配当金のようなもの」であり、
配当金そのものではなく、譲渡益として認識されます。
それゆえに、配当金全額を懐に入れることはできない仕様になっています。
これはどういうことか。
証券会社から支払われる配当落調整金は、
支払われる際に、15.315%を天引きされた状態でまず入金されます。
例えば、本来の配当金が100円の銘柄を100株信用で買っていたとして、配当の権利をとる。
すると、証券会社からは10,000×(1-0.15315)=8,469円の入金があります。
なんか税金のようなものが取られていますが、
これは個人投資家サイドの源泉徴収ではないんです。
これは証券会社サイドの源泉所得税の調整なのです。
次の図のような感じです。

証券会社が本当の配当を会社から受け取るとき、
そこに15.315%の源泉所得税(法人税申告の際に調整する)がとられます。
その取られた分を反映させて、個人投資家に「配当のようなもの」を支払っているというわけです。
ふむ、なるほど15.315%がとられるのはわかった。それはいいとしましょう。
それでは、そのあとに取られる20.315%は一体なに?
この20.315%こそが譲渡所得に対する所得税+住民税です。
普通に売買したときも徴収されますよね。あれと同じです。
配当落調整金が譲渡所得として、通常の売買と同じ形式で課税されるということは、
同じ20.315%の税率で源泉徴収もされるということ。
先ほどの例でいえば、8,469円の売却益を得たのと同じなので、
20.315%の源泉徴収が行われ、
8,469円×(1-0.20315)=6,749円 が手取りとなります。

あれ、10,000円の配当だったはずなのに、ずいぶんと手取りが減りましたね。
信用買い枠パンパン高配当株戦略で必要な配当利回りは?
すいません、この戦略名は私がテキトーにつけました(汗)。
誰しもが一度は考えると思うのですが、
この戦略は、
信用買いの枠一杯まで高配当株を買いこんで保有していれば、
その株の配当利回りと信用金利の差分、すなわちネット利回り分の利ザヤを狙えるのでは?
というものです。
実際に実行に移す人はいないとしても、
どのくらいの配当利回りであれば、年間でプラスになるのでしょうか?
まず一般的な信用金利として、年利2.8%を用います。
大口優遇を受けていない場合のSBI証券がこの数字。
配当利回りをXとして、15.315%の控除分を考慮して、
X × ( 1 ー 0.15315) > 2.8%
これでいいですかね。
信用金利は譲渡所得の上ではマイナス(所得圧縮)に働くので、
調整金と実質的な相殺が行われているとみて、20.315%部分については考慮しません。
これを解くと・・えーと 約3.31%!
今だとこのくらいの利回りの会社は非常に多くなっていますし、
元本変動があまり発生しないタイプの不人気高配当株ならあるいは・・!
え、私ですか?
いやーやりません。リターンのわりにリスクが極大すぎて怖いですし・・。
皆さんも信用取引にはお気を付けください。
今回もお読みいただきありがとうございました。

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